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2021年4月号 改正会社法の下での「役員報酬の基本方針」

欧米と比較すると、日本企業の役員報酬の開示は不十分であるのが現実です。株主総会で役員報酬の総額上限のみを決め、個別報酬額の決定は社長などに一任する場合が多いのです。たとえ一定の基準を設けていても、計算式を開示してない場合が大半であります。法律に従って必要な情報を開示し、役員報酬の透明性と客観性を高めるべきです。役員報酬は経営に緊張感を与え、正しい判断を導くための重要な仕組みであり、適切に設計すれば、持続的な企業価値の向上にもつながることは間違いありません。

 

改正会社法の下においては、大企業は株主総会で個別の取締役の報酬を決めてない場合、取締役会で各取締役の報酬をどう決めているのかという「決定方針」の決議と概要の開示が求められることになりました。概要の開示が義務化されることで、一定の歯止めがかかり、経営の透明性が高まることが期待されています。役員報酬として金銭以外にも、株式やストックオプションを弾力的に付与できるようになりました。

 

これからは、不祥事を起こした場合などに報酬を会社に返還する「クローバック制度」の導入により、不正の抑止に効果が働くようにするべきです。ESG(環境・社会・統治)分野の項目に役員報酬を決める評価の中に盛り込むことも必要です。報酬には、取締役に対して職務を適切に執行するインセンティブを付与するという重要な機能があるため、取締役の報酬等の内容を適切に定めるための仕組みを整備することは、ガバナンスの強化の観点から重要であります。今回の改正を自社の報酬制度全体を見つめ直す好機ととらえ、自社に適した仕組みを整備することが期待されます。

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