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2022年10月号 医療DX いつやるの いまでしょ

アマゾン・ドット・コムが日本で処方薬販売への参入を検討している。利用者は薬局に立ち寄らずに薬送までネットで完結できる。国内で電子処方箋(紙の処方箋をデジタル化し、患者の同意のもとで処方薬のデータを医療機関や薬局で確認できるようにする仕組み)の運用が始まる2023年に本格的なサービス開始をめざしている。

 

これから患者は、オンライン診療や医療機関での対面診療を受けた後、電子処方箋を発行してもらい、アマゾンのサイト上で薬局に申し込む。薬局は電子処方箋をもとに薬を調剤し、オンラインで服薬指導する。その後、アマゾンの配送網を使って薬局から薬を集荷し、患者宅や宅配ロッカーに届ける仕組みを検討している。オンライン診療によるメリットは、高齢者や乳幼児ら医療機関の受診頻度が高く、通院の負担が重い人ほど大きいと考えられる。

 

ただ電子処方箋の導入には、いくつかの条件がある。ひとつは、医師や薬剤師の資格を電子証明する専用カードの取得がある。もうひとつは、マイナ保険証明の「オンライン資格確認」と呼ぶシステムを使える機器の設置である。このシステム上で医師が電子処方箋のデータを登録し、薬剤師が内容を確認しなければならない。

 

すでに電子処方箋の実用化は海外が先行している。経済協力開発機構(OECD)のデータによれば、フィンランド、スウェーデン、エストニアなどでは電子処方箋の普及率がほぼ100%である。医療のデジタル化に積極的な政府の姿勢が窺える。

 

今後オンラインで薬剤師から服薬指導を受け、外出せずに処方薬を受け取る人が増えれば、病院前などの「門前」に薬局を構える伝統的なビジネスモデルが崩れる可能性がある。規制改革をテコに薬剤師業務を効率化し、特色あるサービスを展開できなければ、コンビニエンスストアを上回る6万店を超える薬局市場は大きな影響を受けることになる。オンライン診療・服薬指導のニーズが高まれば、海外に比べて遅れている医療のデジタル化を後押しする業界再編の契機になるかもしれかねない。

 

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