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2023年2月号 人でしか出せない価値を追求する小売業

2022年11月の生鮮食品を除く消費者物価指数は、前年同月比で3.7%上昇し約40年ぶりの高い伸びとなった。また、日本商工会議所の調査では、原材料費の高騰分を商品・サービスに十分反映できていない企業は約9割に上る。いまや取引価格の適正化による価格転嫁の促進が不可欠である。そのような環境下、消費者の高い支持をえている小売業3社のトップインタビューにおいて、感心した点を①取り巻く環境認識 ②店舗のあり方 ③品揃え、価格等 の3点にまとめてみた。

 

  • 取巻く環境認識

・外食においても値上がりが起こっており、外食から中食、内食に需要が移っている。

・人手不足と人件費の上昇が起ってくる中、物流拠点からお店までの配送距離の加重平均を短くする。

・GTP(グッド・トゥ・パーソン)シャトル、人のところに商品が来てピッキングできるといった仕組みを入れて省力化している。

・労働人口が減少していく中、オペレーション面においてAI(人口知能)の自動発注を導入して発注時間の削減や発注精度を上げている。

・AI(人口知能)発注の対象部門、品群の拡大や電子棚札の導入などを積極的に行う。

・店舗やPC(プロセスセンター)において、バイオマス発電や太陽光発電を導入している。

・物価高の局面で、適正な価格転嫁、付加価値や生産性の向上による企業収益の改善、それに伴う賃金上昇の流れを作り、経済の好循環を作っていく。

・部門責任者が、今後何が変わり、何にチャンスがあり、何を変え、どう連携するかを徹底的に考え各施策を打っていく。

 

  • 店舗のあり方

・デリカの惣菜、寿司、ベーカリーの好調。

・価格が大きく上がっている局面においては、EDLP(毎日低価格)よりはハイ&ローの方がお客さまに分かりやすいい。

・価格コンシャスの軸とミールソリューションの軸を強めている。

・個店経営。ミールソリューション、お客さまに対する提案だったりをどう提供できるか。

「新しさ」「楽しさ」「おいしさ」「健康」という切り口での差別化や機能性の高いものにする。

・節電の取り組みに加え、既存の冷蔵ケースに冷気の流出を防ぐカーテンや遮断版を取り付けて電力消費を抑える取り組みをしている。

・毎年、ウェブ、店舗合わせて10万人以上の方にアンケートを実施している。質問内容は、「もっとも利用する店舗」「その店舗の印象」「来店動機」「部門評価」などですが、他企 業についても聞いている。

・価値を上げていくということは、人の「無形資産」例えば調理能力であったり、アレンジメント能力を高めていく。

・生魚コーナーにおいて、生魚を売るだけでなく、お客さまとコミュニケーションする対話

力と、なおかつ商品化して刺身、切り身などいろいろな形にする能力を高めていく。

・近隣のレストランのシェフとコラボレーションしてダイレクトに習うという取り組みをしている。

 

  • 品揃え、価格等

・ベーシックからちょっと値段は高いけれどもおいしい、生活を豊かにしてくれる、楽しくしてくれるようなアイテムの品揃えや提案。

・価格に敏感なお客さまが増える中で、価格対応にどう進めていくのか。

・生鮮惣菜は、即食性だけでなく、生鮮部門の商品ならではの原料、産地、鮮度などの高付加価値を付け、お客さまから高い支持がいただける品揃えにしている。

 

いまや小売業マーケットのライバルは、競合他社だけでなくドラッグストア、コンビニエンストア、インターネット通信販売と多様化している。これからも熾烈な競争が続く中、「人でしか出せない価値の追求」をし続けることが生き残る道ではないだろうか。

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