金融NEWS・コラム

NEWS / COLUMN

2017年12月号  ゾンビ企業が日本経済の活力を奪う

本年11月、「東アジア倒産再建シンポジウム」に参加して考えさせられることがあった。本シンポジウムの目的は、日本、中国、韓国における倒産又は事業再生に関する専門家・実務家の国際的な交流を促進し、意見交換と実務情報の共有を図ること、そしてそのことによって、東アジア諸国において、相互に倒産又は事業再生に関する理解を深め、人的な連携を図ると共に、より透明性がある倒産実務を確立することにある。いま中国や韓国は、産業の過剰生産問題等にてゾンビ企業の整理に本腰で取り組んでいるのもかかわらず、そこには周回遅れの日本がある。

 

株式会社東京商工リサーチの発表した統計結果によると、2016年度の日本国内での企業破産件数は前年度比3.5%減少の8381件、8年連続で低下し26年振りの最低も更新した。これと同時に、東京証券取引所のデータをみると、同期の取引を行った上場企業約4千社のうち、破産した企業は1つもなかった。大規模な金融緩和、政策の下での超低金利、融資がたやすく受けられることが破産企業減少の原因である。日本のゾンビ企業への対応が力不足で、淘汰されるべき企業が速やかに市場から撤退していないからである。

 

そして経済協力開発機構(OECD)のリポートで、「手厚い公的支援が経営破綻している「ゾンビ企業」を倒産させず、企業再編を遅らせている。」と述べた上で、「そのような支援が資源配分にひずみを生じさせ、生き残るべき企業の金融アクセスを制限し、日本の潜在成長を減じている」と指摘している。

 

元産業再生機構委員長で弁護士の高木新二郎先生は、「窮境企業の救済是非と程度は、市場の判断に任せるべきで、圧倒的な財力をもつ公的恒常機関による介入(=支援)は、市場競争を阻害し、退出させるべきゾンビ企業を蔓延させ、日本経済の活力を減退させる恐れがある。」と述べておられる。

 

古い企業が破産して撤退しなければ、新しい企業が入り込む余地はない。ゾンビ企業は日本企業を投資不足に追いやり、市場競争を過剰にさせ、商品価格を低迷させ、ビジネスサイクルの回転を止める。ゾンビ企業の淘汰のカギは、政府が「国家の安全保障」「雇用維持」「技術の流失防止」など様々な理由で介入せず、市場に任せることである。遅れた産業への保護をやめ、新興企業により多くの可能性を与え、金融緩和の下での「ゼロ破産」にこだわることなく産業構造改革の歩みを進めることが、経済活力を増加・加速させることにつながる。2020年オリンピック終了後の日本経済を杞憂している有識者は多い。

お問い合わせ

TOP